問題のある相続

相続に何らかの問題があって,
不動産登記ができないとか,
預金を金融機関から引き出せない場合がある。


または,債務の相続人として債務支払の催促を受けることがある。


例えば以下の理由によると思う。

湯原司法書士事務所 司法書士 湯原 收 TEL 048-471-1422   
埼玉県志木市本町1−9−20
相続人の中に,行方不明のものがいる。


 何らかの理由,それは本人しかわからないことかもしれない。外の人から見れば,他愛のないことなのかもしれないが,何年も家族と連絡を絶ってしまった人がいる。何ら財産がなければ問題は,生じない。しかし,遺言もなく,自宅などの登記名義人であった人が亡くなり,法定相続人のなかに連絡をとれない人がいると,遺産分割の話合いができない。遺産分割調停を申し立てても,裁判所から連絡がとれないので,調停の成立する余地がない。
 この場合の対処
 家庭裁判所に不在者管理人選任の申立てをする。法定相続人以外の人に事前に頼み,その人を管理人に選任するように,裁判所に申し立てる。  不在者の相続へ
    裁判所公開の不在者管理人選任申立書の書式

 時に,家族が望めば,失踪宣告をして,死亡とみなすという手もある。
    裁判所公開の失踪宣告申立書の書式

 事前の対処
 家族の中に,このような人がいる場合には,事前に対処することがよい。対処の方法は,死因贈与契約を作成するか,遺言をしておく。
他に相続人(認知した子・前婚者との間の子)がいるが,どう話あったら良いか困っている。


亡くなった人の性格,人間関係,相続人の物の価値の見方により,すべての人に一様でなない。

まず,相手と連絡をとってみよう
ケース1
 私は,相続人の一人に,その人に直接会いに行くように勧めた事があった。彼は,20歳になったばかりだった。相手は,職務上言えないが,戸籍,住民票から大体どのような生活をしているか推測がつくが,勝手な判断は危険なので,空想だけした。彼は一人で,直接会いに行った。話しでは,マンションで暮らしている。「会って喜んでいましたか」の問いに,「さあ」。数日後,相手(彼女)から私宛に電話が入った。弁護士に依頼して相続放棄をするとの事である。いくらかかったのだろう。数ヶ月して,裁判所の相続放棄申述書が送られてきた。これによって以後の全ての手続が円滑に完了した。



ケース2
 ある人(依頼人)の父が亡くなった。
 その父には,現在の母と結婚する前に,別の人と結婚したことがあり,子供も生まれた。
依頼人は,会ったこともない。人からどのような人か聞いたことも無い。
連絡のとりようもない。
そこで,まず,その人の現在の住所を調べることにした。
本籍地の市役所へ,戸籍の附票を取り寄せることにする。
戸籍の附票とは,現在の住所と過去の住所の記録が記載してある。
(実はこのケースはよくあることである)
市役所から,戸籍の附票が返送されてきた。
なお,このようなケースでは,一人であることもあれば,数人ということもある。

 親戚など,間に関係する人がいれば,中を取り持って相談するのがベストだ。
「法律は家庭に入らない」といわれることがある。
法律で一概に決められないことが,家庭や親戚関係である。
しかし,中に入る人がいない場合もある。
 私から,相手に手紙を出した。
手紙の内容は,法律の要件のみ伝えるのは禁物。
法律は,守られないこと,人が,それを破ることを前提にできているからだ。
相手の人が最も知りたいこと。彼が,彼女が父と会わなくなってから,どのようにすごしたか,
どのような性格の父だったか。彼は,父がいないことで,苦労もしたはずなのだ。

 それで,結果なのだが,私の場合,相手が協力してくれるばあいがほとんど。
必要な書類(印鑑証明,相続分譲渡証明書)が送られてくる。
お礼に,なんらかのものを,依頼人から相手に送ってもらっている。

相続分譲渡証明書ダウンロード


話がまとまらない場合,家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることができる。
   裁判所公開の遺産分割調停申立書の書式

あるとき突然の郵便物が
  • ある銀行から本人の下に,手紙が送られてきた。
     債務者の子等が相続放棄をし,遠い親戚だが,兄弟の子まで,相続人となったから,債務を相続したとして,支払うかどうかというものだ。戸籍等を揃え,被相続人の最後の住所地管轄家庭裁判所に郵送で,相続放棄の申述をし,1ケ月後,裁判所からその旨の証明書が送られてきた。以後,その銀行に証明書のコピーを郵送し,手続は完了した。

  • 今度は,債務を相続したのではなく,預金債権を相続した場合があった。一度もあった事のない人の相続人だとして,預金をひきだすから,受け取って欲しい。そして,その手続の協力依頼の郵便。
     最初は詐欺かと思った。でも反対給付がない。相手の出方を窺った。何回かの話の末に,相手を信じることとした。相手を信用できると考えたのではなく,一応のこと。あっけなく終わった。一日で預金を引き出し,分配した。

  • こちらから,郵便したときもある。
     詳しく言えないが,裁判所の手続で債権額を確定する必要がある場合がある。なければないでいい。しかし,相続人が放棄するか,否かで,手続きでの債権額に変化が生じる。戸籍を取得し,相続人を確定,相続人等へ,内容証明で,相続するか否か,告知した。すると,何日かして,相続放棄申述受理証明書が送られてきた。そして,私の抱える手続が安定,確定した。

相続人どうしで話し合いがつかない
 
 相続が始まって,相続人になかには,親の遺産をあてにする人もいる。
 欲のない人もいるが,訳があって,欲がなくても,分け前を戴かなくてはならない人もいる。
当然権利もあり,最低の遺留分もある。
しかし,遺産分割は一切の事情を考慮しておこなうし,そもそも相続は,相続人の生活のためにされるから,
法定相続分どうりにはならない。計算どおりに,ケーキをきるようにはいかないのが実情だ。

 このような場合,裁判所へ遺産分割調停を申し立てることもできるが,調停を申し立てたとして,どのような提案がなされるか,予想してみる。
 それを依頼人に提示してみる。
案外,すんなり,納得する場合もある。

しかし,財産の分割でなく,今までの子供のときからの感情が,あふれでてくる人もいる。
まとまらなければ,調停,審判となる。最高裁までいった人もいた。
相続人のいない人が亡くなった。

その人に子供はいない。
親もすでにいない。
兄弟もいない。
結婚をしなかったか,しても離婚し,その間に子供を設けたこともなかった。

例えば,面倒をみていた従兄弟(いとこ)が死亡し,このような状況にあるとき,従兄弟どうしは,相続人とならない。だから事前に遺言でもしておけばいいのだが,それもしていなかった。住んでいた不動産を所有していたとか,預金があるとき,そのままにすれば,財産は国もものになる。
でも,面倒をみていたのだから,葬儀費用とか,入院費,生活費のため費用がかかったはずだし,従兄弟(いとこ)としても国に与えようとは思っていなかったはず。

少し,大変だが,特別縁故者への財産分与の手続で国への財産の帰属を防ぐことができる。

@財産管理人の申立てをし,その官報公告をし
A債権者がいるかの官報公告をし,
B相続人がいるかの官報公告をし,
その後,3ケ月以内に
C特別縁故者としての財産分与の帰属の審判を求め,
その審判をもらって不動産登記,預金の払戻し手続きをする。

専門家に任せたほうが良いかもしれない。
注意する点 専門家と名乗りながら,経験もなく
専門家でない人に最も注意すること。


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