不在者と相続について 不在者とは,連絡を取れなくなった人のことです。 そんな人が,相続人の中にいて,手続きできないときのことです。 |
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湯原司法書士事務所 司法書士 湯原 收 TEL 048-471-1422 埼玉県志木市本町1−9−20 |
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あるときから,連絡のとれなくなる者がいる。 借金の取立てに追われ,家族や親戚にに迷惑をかけたくないためか。 あるときから,縁がなくなってしまったのか。 今までの住んでいた場所からいなくなり,連絡が途絶えてしまった者を,不在者と呼んでいる。 その人に所有物があるなら,誰かに管理をまかせるとかして,自分の持ち物を放り投げる人はそうザラにはいないだろう。 問題は,その人に関係する人が死亡し,相続問題となり,その不在者が相続人となり,様々な手続きができない場合のことである。 相続問題で,亡くなった人が,不動産を所有し,相続登記手続きをするには,相続人全員の遺産分割協議書を作成し,実印を押印しなければならないが,相続人のなかに不在者がいると遺産分割協議書を作成できないし,登記もできなくなってしまう。 この場合には,家庭裁判所で,不在者の代理人となる者(財産管理人といわれる)を選任してもらい,その財産管理人が不在者に代わって実印を押し遺産分割協議を成立させることができる。 その遺産分割協議書を登記申請に添付して,登記手続きをすることができるようになる。 では,どのようして,家庭裁判所で財産管理人を選任してもらうのか。 この家庭裁判所での手続きは,不在者の財産管理人選任も申立といわれている。 民法25条以下が根拠となっている。 私は,この手続きを,実際に経験した者である。 |
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対処・手続きなど 私ももとに,ある者と連絡がとれない,居場所がわからない,そのために手続きがとれないとして,相談におとずれた場合,すぐには,不在者とは,決めつけない。 第1に,まず,探してみる。 このような,相談がきて,探してみると,実は見つかるというケースのほうが,私の事務所ではとても多い。 見つからなくても,その際は,探索が尽きたのであって,分からないと断定することはない。 翌年に見つかれば不在者でなくなる。 (ここで断っておくが,私は探偵業ではない。単なる行方不明者の探索はおこなわない。法的手続きが必要だから探すのである) @まず,依頼者本人に戸籍地で戸籍の附票をとってもらう。 戸籍の附票というのは,今までのその人の住所移転の変遷が載っているものだ。本籍地で取得できる。 本籍地が遠方なら,司法書士は,役所への提出のため必要なら,職務上,住民票や戸籍の取得を申請できるので,郵送でこの書面の取得の申請をする。大体1週間程度で,市役所等から送られてくる。 戸籍の附票に最後の住所地が載っている。 A上記住所地の場所に行ってみる。 大体,日曜日に出向いている。平日は働いていることが多く,日曜日の11時頃は,まだ出かけていずにその場所にいる場合が多い。 法的な必要があって,出向くのだから,その場所に求めるひとがいるなら,必要書面にすぐに印鑑をもらえるように準備して行く。 この場合には,遺産分割協議書でなく,相続分譲渡証明書などでおこなう。 行くその日には,その場所の町の図書館に寄って行く。住宅地図のコピーをとるためである。また求める場所がどこかも知るためである。もし居ないなら,後に家庭裁判所に提出する書面の添付資料となる。 実際に行ったら,その人がいたということがあった。 ケース1 付近の様々な人に聞いたところ,最初は知らないような顔をしていたが, ある人が,「あそこにいるよ,案内してあげな」」と言い,その場所にいったらいたのである。 本人かどうか聞いたところ,親戚知人の名前を理解できたので,本人と断定できた。事の次第を説明し,印鑑をもらった。 実印でないので,その印鑑を市役所に持っていって,印鑑登録をするように説明し,後日私の元に本人から印鑑証明が送られてきた。依頼人は何度かその場所にいったが,見つからなかったと言っていた。探し始めてから,5年ほど経過していた。 ケース2 依頼人に,まず不在者の戸籍の附票をとるように言ったところ, 市役所でとってきた。 最後の住所の項目に,「○○県○○市○丁目○番○号」とある。 依頼人は,次の日曜日に行って来て見るという。 数日後,依頼人が再び事務所を訪れた。 「明かりがついていて,人がいるような感じがするんですが,ドアのブザーをならしても出てこないんです」 「居留守を使っているのか,表札には名前がでているんだけど。名前を書いてポストに入れてきました。」 そして,また数日後,不在者から依頼人へ電話があった。 依頼人の家におとずれるという。 20年ぶり,会うことができ,後,登記も完了した。 以上のように,探してみると結構みつかるものである。 これに比べて,北朝鮮の拉致問題は,全く稀有なことである。 いるか,いないか,どうしたか。どうしてか, 人々は生まれながらに自然に協力的である。 害を意図しなければ,あのような北朝鮮の態度をとれない。 そのことを,北朝鮮は知っている。 |
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このように見つかればよい。 見つからなかった場合にはどうするか。 B裁判所へ不在者の財産管理人選任手続きをし,管理人は権限外許可の信販を求め裁判所での手続きをすることになうる。 ちょっと難しい手続きである。 一般の人は,弁護士又は経験ある司法書士に依頼したほうがよいと思う。。 以下は,専門家用向けの記載である。 □事務所に帰ってきてから,どのように付近を探索したか,そのときの天候,日時,場所,聞き込みをした人,写真撮影などをしたことを調書にまとめておく。 次の処理もしておく。 □実際に出向いても,見つからない場合,戸籍を取り寄せ,不在者の親族を知り,彼等に不在者の所在っを知っているかの 便りを郵便でだし,返信用に回答書を同封する。回答書を集める。 □居なくなった人の最後の住所地の警察署に行って,家出人捜索願いを出す。 ※このとき,受理番号を聞き,メモしておく。 □戸籍の附票の最後の住所地へ,配達証明郵便をだしておく。 返送されたら,以下も申立の際の資料とする。 (1)まず,家庭裁判所への申立です。 申立書は,ここからダウンロードできます。 書き方は,こちらから見れます。←最高裁判所のHPです。 しかし,書類は申立書だけでない。資料の添付が必要になる。 不在者の戸籍,戸籍の附票,申立人の戸籍,住民票などである。 上記の配達されなかった配達証明郵便,調書,写真,回答書なども。 □裁判所に判りやすいように身分関係説明図など作成するのもよい。 申立書中の添付書類の記載は,あまり考えなくてよい。 □不在者を探索した経過を記載した,上申書をつける。警察での家出人捜索願い受理番号も上申書で述べる。 いつごろ,なぜ居なくなったか,どんないきさつがあったか,利害の関係も述べる。 申立書の申立の実情は,形式的な記載でよい。 □財産管理人の候補者を立てておくと良い 費用がかからないからである。 裁判所で候補者を探してもらうと,後,報酬を請求される。 当事務所では,当職を財産管理人として,申し立てている。 (2)裁判所から申立人と財産管理人へ照会書が郵送される。 照会書がきたら,素直に隠さずありのままの事実をそこに書く。 なぜ申し立てたのか,不在者と管理人の関係,どうしてその人を管理人に選んだのか等の質問項目がある。 照会書は裁判所へ郵送で返送する。 (3)裁判所から審判書が届く。 問題なければ,財産管理人として選任した旨の書面が届く。 (ア)管理人は,財産目録を作らなければならない。 財産関係書類を集め,裁判所に管理報告書を提出しなければならない。 現状を報告する。 (イ)次に権限外許可の審判を求める申立書を作成する 申立書 ダウンロード □ 申立には,遺産分割協議y疎の案を添付する。 この協議書には,押印は不要である。 □上申書を添え,不動産などの財産の時価はいくらなのか,結果不在者の相続財産の価格はいくらになるか, 権限外許可の審判によって取得する相続人はどうしてそれを取得することが正当化できるのか,上申書によって 詳細に述べる。 □相続関係の戸籍は,財産管理人申立の際に添付しているから,関連事件援用として,記載すれば添付に必要はない。 従って,申立書には,関連事件番号を記載しておかなければならない。 (ウ)権限外許可の審判が下りたら,登記手続などの書類を作成し,遺産分割協議書には, 不在者○○○○財産管理人 司法書士 ○○○○として,実印押印し,代理人として署名することになる。 (エ)すべて手続きが完了したら,それで終わりでない。 裁判所に,管理終了報告届けが必要である。 結果ならびに,職務完了の旨を報告し,この書面を裁判所に送付する。 これで,終わりである。 以上 |
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