外国人が死亡し,日本にある不動産やその他の財産を,相続する場合 湯原司法書士事務所 司法書士 湯原 收 TEL 048-471-1422 埼玉県志木市本町1−9−2 |
外国人の相続 「法の適用に関する通則法」という名前の法律がある(※1)。 外国人が日本にいる場合にその外国人の国の法律で処理するのか,日本の法律で処理してよいのか等を定めている法のことである。 それによると,死亡した被相続人が日本人でない場合,その人の本国の法律で相続が処理される(通則法36)。 例えば, ■在日韓国人の場合には,日本で不動産などを所有し,相続が発生した場合には,韓国の相続関係の法律が 適用され,韓国の戸籍を添付して(訳文付き),法務局に登記の申請をすることになる。 しかし ■在日アメリカ人やカナダ人の場合,本国法によれば,相続が発生した地の法律によることになっている。これ も通則法41によれば,「当事者の本国法によるべき場合において,その国の法に従えば日本法よるべいと きは,日本法による」となっているから,この場合には,日本法になる。反致という言葉で言われている。 在日本米国領事のサイン証明(訳文付) 亡くなった人が日本人で相続人が外国←日本法を適用 亡くなった人が外国人の場合←本国法を適用 ところがやっかいな問題もある ■在日北朝鮮人の場合,本国の法律が分からない。また日本は北朝鮮を国として認めていない。 戸籍があるのかどうかも分からない。あるらしいが, 書面自体公文書として認められないのである。 あるとして,取得するにも困難だろう。 取得できれば,上申書と戸籍を添付して,申請は可能と思うが, 予め,事前の予防をしておいたほうがいい。 策は,在日北朝鮮人の方は,遺言をしておくべきである。 「遺言の準拠に関する法律」というのがあって,遺言による相続なら,日本法が適用されることになる。 遺言は,便利だ。 ※1 かつて,「法例」と言われていた法律が改正されて,平成18年施行されている。 ちなみに,USAの民法(Civil Law)の適用は,各州(State)により異なるから,USA内でも,どの州法を 適用すべきかの連邦の法がある(Conflict of Law)。 |
親子を証明する戸籍について 日本人は,市区町村発行の戸籍で取得することで,親子を証明することができる。 しかし,アメリカ,カナダ,英国など戸籍のない国がある。 というより無い国のほうが圧倒的に多い。 以前,外務省に問い合わせをしたときに聞いた話では,戸籍のあるのは,日本,台湾,韓国,それとスイスだ けということを伝えられた。(ちなみに,昭和20年以前を記録する現在韓国の戸籍の記載は,日本語のままだそうだ。) 相続があったとき,戸籍のある国では,容易に相続関係の証明がつく。 しかし親子を証明できないとき,遺言で相続させるのでなければ,誰が財産を引き継ぐのか分からず,争いになってしまう。 英米国では,このような争いをIntestateと言っている。日本語に直訳すれば無遺言相続のこと。 かつて,この争いの解決は教会で行っていた。 しかし,この国々で,ある時期から国が司ることになった(Chambary)。 これが家庭裁判所がある発想になって,米国を経由して日本に伝えられた。 このような事情で,日本人の遺言の見方とアメリカ人の遺言(Will)見方は少し異なっているようである。 日本人は財産の承継を考慮して,遺言を作成する。 しかし,財産に限らなくてもよいのではないか。片身とか,くだらないものでも大切にしている物を誰に引き継いでもらいたいとか,もっと心の温まる感情的な遺言があってもよいと思う。それは違法なことではないはずである。無意味でないはずである。 |