相続放棄(民法915条以下)                                      

 
原司法書士事務所 司法書士 湯原 收 
TEL 048-471-1422   埼玉県志木市本町一丁目9番20号



 財産上の権利義務は,亡くなった被相続人から相続人へ承継されるが,
債務を承継し,迷惑な場合もあり, 遺産をもらうことをいさぎよしとしない場合もあるから,
相続の効果を,相続人の意思によって,確定させるか,否認するか, 選択の自由を与え,その意思によって,
相続しなかったことにする制度が設けられている。

 相続放棄の手続は,被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ相続放棄の申述を申し立てることで,行われる。
いつでも,できるのでなく,相続の開始を知ったときから,3ケ月以内と,期間が定められている(915)。
死亡のときからでなく,相続の開始を知ったとき,
たとえば債務なら,債務があることを知ったときである。

(注意点)
 相続放棄すれば,債務を免れることができると思って,裁判所に書類を提出し,受理証明書ももらえたとする。
放棄で,その人は相続人にならなかったことになる。つまり,次順位の相続人がこの問題を引き受けることになる。
債務なら,だれだって,受けない。相続放棄は,一族全員を巻き込んだものになる。
弁護士とか,司法書士とか,一人5万とか3万なんていっていても,兄弟まで巻き込むと,
大変な金額になるだろう。
簡単そうで,厄介な問題もでてくるんだ。
少額なら,手続き費用のほうが多くなってしまう。

費用は,収入印紙800円と郵券,さいたま家庭裁判所の場合,郵券は(84円×5枚と10円×5枚)の切手。


申述書の用紙や書き方はこちら

必要書類は,被相続人の除籍謄本,除かれた住民票。
相続人の戸籍謄本,住民票(本籍続柄記載あるもの)
相続の開始を知ったときが,死亡のときでない場合,郵送物の写しなど。

(その1)
 よくある話で,「私の父の相続のとき,自分は放棄した。」と言う人がいる。
あるいは,「相続の手続きで,兄から放棄してほしいから,印鑑を押して欲しい。と言われたが,意味がわからない。」
 よく見ると,裁判所の放棄でなく,他のやり方で,財産をもらわないことを放棄と理解しているらしい。
書類は,遺産分割協議書であったり,相続分全部譲渡証明であったり,果ては,特別受益証明書なんていうのもある。
これらは,債務まで,放棄するのでなく,プラスの財産だけを貰わないという事だ。
債務があれば,承継することになる。
 裁判所での放棄では,戸籍をつけたり,書類を作成したり,あるときは出向いたり,また,時間的にもすぐにはできないから,
債務がないなら,上記の簡単なやり方で,相続人のうちのある者に財産を集中させるのも,やり方の一つである。
 しかし,最近は,債務漬けの人も多いし,係わりたくないという人もあり,放棄をする人が増えている。


(その2)
 親が死亡したが,財産がある。しかし,相続人のある者が,破産しなければならなくなったとき,
遺産分割協議は否認権の対象となり,破産手続きを行うことができなくなる。
相続放棄をしても,破産手続きの支障となることはない。
一身専属権だからだ。
また,相続人のある者が,生活保護受給者の場合,遺産分割協議すると,受給を停止される場合がある。
しかし,相続財産がそれほどないなら,相続放棄することによって,受給停止とならなかった経験がある。例外的と思う。

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