商号について

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商号について
商号自由主義  商人は,その氏,氏名その他の名称をもって商号とすることができる(商16条)。「その他の名称」でも構わないから,他人の名前でもよいし,実際に行う業務と無関係な者でもよい。以前,「○○工業」というのに,不動産業を営んでいる会社の社長と会ったことがある。聞いてみると,50年ほど前社長の父君が,他の人にはできない機械関係の仕事をし,会社を作り,大変な利益をあげていたが,時が変わり誰もその機械を必要としなくなった。そこで,息子である現在の社長が,会社の不動産の管理をしつつ,現在までに至ったが,以前と同じ場所で生活もしているため,その名前も地域に浸透し,あえて,そのままの商号を使用し続けているということだった。
 また,「その他の名称」よいから,文字についても,日本文字に限らない。現在アルファベットの使用も可能になった。ロシアの文字・キリシャ文字・ドイツ語のウムラウトについてはどう思だろうか。
 一方,個人の名前との一致,実際の営業と一致した商号を要求する考え方もあり,その制度を採用している国もある。独仏法系の国である。
 商号自由主義の考えは,英米法系の国の考え方である。
 では,国際間取引の行われる現在,○○工業なのに,異なる営業を独仏で行ったらどうなるか。○○kougyou KK.として契約すればいいと思う。独仏人に日本語のkougyouの意味が解るだろうか。
商号に対する制限 会社設立時や,営業し続けている会社が商号を変える際には,悩むところ。自由に選定できる幅が大きいからだろうか。結構制限も多い。
会社商号の制限 会社の商号中には其の種類に従い,合名会社、合資会社又は株式会社なる文字を用いることを要す (商17条)。理由は,社員(会社を持っている人のこと,働いている人ではない)の責任の種類を明らかにする為。
 会社でない者は商号中に会社であることを示した文字を用いることができない。会社の営業を譲受けた者も同じ(商18条)。違反者は二十万円以下の過料となる。
 あたり前のようだが,名刺に会社でないのに,勝手に株式会社なんて印刷しているケースが結構ある。
 有限公司(中国名)も法務局では受け付けない。だが,コーポレーション(米名)は受け付ける。CO.LTD(英国名 コーポレーションリミテッドバイシェアズと発音する)もだめかもしれない。Inc.(INCORPORATIONの略ー米国で使用)・カンパニーは受け付けられるかもしれない。SOCIET(仏)・AKZIENGESELSCHAFT(独)もある。ちなみに諸外国では,CO.なら米国を準拠法とした法人と考える。CO.LTDとすると,英国で設立された会社と誤解されかねない。日本の会社は英文名で,KKとすべきなのかもしれない。「英文名では・・・と記す」と定款に記載しておく会社も増えている。
類似商号調査から同一商号調査へ 今まで,設立手続のため,類似商号の調査という作業があった。同一の営業のため他人が登記したものと判然区別することができないときは使用できないからである(旧商業登記法27条)。平成18年4月施行の新商業登記法27条では,「その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。」ということになる。
【評価】@今まで,目的が異なれば,同一商号でのしようできたが,新法では目的の要件が無くなっている。すると,同一である限り,業種が異なっても,使用できないことになる。A判然区別できなくても,同一でなければ,よいことになるから,何らかの飾り文字をつければなんとか使えるようになる。B他人と同様類似の商号使用について,新会社法12条に侵害停止・予防請求,過料の措置がある。だが,この請求のためどれだけの手続費用がかかるだろうか。数十万では済まないだろう。すると,不正の目的でなく使用するなら,あえて類似の商号を使用する場合もあるのではないだろうか。
作業は,インターネットで登記情報サービスの情報を取得することで,行われる。
業法の中に使用制限規定を設けている場合もある(銀行・生保・信託)。
商標・営業標との違い  商標は,自己取扱商品を他人が扱う商品特別するためのもの。コーラはコ○コーラを連想しますか。それともペ○シコーラですか。この商品を扱う会社の正式商号は何でしょうか。
 営業標は,営業そのものを表示するための記号。越という字○で囲んでなんというデパートでしたっけ。この会社の正式商号はなんでしょう。
 郵政民営化で「〒」は,営業標になるのでしょうか。
日本古来から「屋号」という場合があります。商号と違う点を考えてください。
同一商号 1 商号の登記は,その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本 店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない(商業登記法27条)。
2 「(ア)所在場所」とは,「東京都○区○町○丁目○番○号」のように表現される。
(イ)会社法に「所在地」という表現がある。会社の本店の所在地が定款の絶対的記載事項になっている。
「所在地」とは,「東京都○区」までの最小行政区画で良い。
3 会社の目的があ同一でも,商号が同一でなければ類似でも登記できる。
4 商号が同一でも所在場所が同一でなければ,登記できる。
5 登記は可能でも,他の制裁を受けることがある。会社法12条の侵害停止・予防請求,過料等の制裁である。
6 同一商号の問題が生じた場合,あえて,5の制裁を覚悟してもその商号を使用するか,制裁や,事業遂行から生じる問題(同一商号使用したため,変な電話がかかってくることがある)避け,他の商号に変更し使用することとするか,最終的に会社が決定しなければならない。


事業遂行から生じる問題の体験例。
 仮に,山田さんとしておく。山田さんは,長年,「ヤマダ」という商号で,事務機器販売や文具店を経営してきました。ある日,「ヤマダ」という日本料理店ができました。そこでは,昼食の出前をしていました。それ以来,文房具店の山田さんの店に出前の電話がかかってくるようになりました。料理店は繁盛したので,山田さんの文具店は,出前の電話の対応に大変になりました。結局,山田さんは,商号を変更しました。また現在は,商標登録を考えています。


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